
グラントシロカブト
ディナステスの中でも一際存在感を放つグラントシロカブト。
属の中では中型で省スペースも可能な同種ということで、我が家では100頭前後確保してブリードしようと思っておりますが、憂鬱な孵化までの期間をどうにか短縮できないか、試行錯誤していく今回です。
さて、Xでは投稿してましたが、今季グラントシロカブトは2ラインを抱えています。
第1組はペアリング後、すぐ産卵セットに投入した♀ちゃんが頑張って産卵してくれたおかげで、現在(2回目の産卵セット割出し)の段階で60個ほど卵を確保出来ています。
さて、グラントシロカブトと言えば一般的に言われるのが孵化までの期間がやたらと長いこと。
長い場合は半年ほど卵のままなんてこともあるようで、そうなれば管理する側としてはなかなかに骨が折れます。
うちのブリードルームの環境なら適性よりも少し温度帯が低めなんですよね、クワガタメインの環境なので高温を維持するのはなかなか大変で。
どうにか3ヶ月間ぐらいで孵化して貰いたいところ。そんなわけで、今回はやれることを色々と模索してみようかというお話。
グラントシロカブトの生態。
まずグラントシロカブトの生態について。
グラントシロカブトが生息しているアメリカ合衆国のアリゾナでは明確な雨季と乾季があります。
Weather Sparkによる最新の情報では今年の雨季は7月9日から4月3日までの8.8ヶ月。それ以外の時期が乾季にあたるので、乾季はおよそ3.2ヶ月とされています。
そしてアリゾナ州・フェニックス(標高331m)における年間気温は8〜41℃。なんと冬場でも最高気温が20℃に達する日もあるとのこと。
もう少し掘り下げると乾季にあたる7月から4月の平均気温帯は23〜35℃、雨季は23〜33℃。
北中米に生息する他のシロカブトと同様の生活環であると考えると生息している標高は1000〜1600mが標準かと推測。そうするとフェニックスよりも5〜9℃ほど低いはずなので、おそらく生息地の気温は乾季雨季通して14〜26℃あたり、寒い日なら氷点下になる場合や、最も暑い日なら35℃近くなる場合もありそうな感じ。
さて、こんな環境で逞しく生き抜いている彼らは環境に適応した独自の進化を遂げたとされています。
飼育下での卵の期間が長いのはその結果と言えるでしょう。
3ヶ月〜半年ともされる孵化までの期間は、乾季を乗り切るために見出されたものなはず。
通常のカブトムシのように1ヶ月ほどで孵化してしまうと身体の弱い初齢の状態で乾季を過ごさなければいけません。
それよりは卵の状態で乗り切る方が生存率が高いと結論づけたのでしょう。
現に雨季の終わりに産卵された卵は、卵のまま乾季を乗り越え降雨と共に孵化すると言われています。
体色が白色なのも強烈な日差しから身を守るためなのかもしれません。
そうすると湿度で体色が変わるのは雨季になるべく目立たないように生きるためなのか、結果こそ分かりませんが、熾烈さ生存競争にさらされたグラントシロカブトならではの進化の形です。
雨季の訪れとともに孵化するのであれば、なんらかのファクターを認識して気候の変化を感じとっているはずです。
ということで、長々と書いてきましたが、今回注目したのは”湿度”。
産み付けられた卵は乾季を経験したあとに雨季を迎えるというのが、自然界での流れなはずです。
飼育下ではどんな容器であれ、飼育部屋の湿度に左右されて容器ないの湿度も変化します。
今回の検証は春先に行ったので、室内の湿度はおよそ40パーセントぐらいでした。やや乾燥気味なので、自ずと飼育容器内も徐々に乾燥していきます。
当然、産卵セットも同様で、割出し時のマットの湿度はメスが産卵した段階よりも乾燥します。
その乾燥した状態から加水することで雨季と勘違いして孵化してくれるのではないかというのが今回の検証です。
検証。
まず,同時期に産卵したであろう卵を確保します。
2025/2/10〜2/18まで投入していた産卵セットから卵を37個得ることが出来ました。
膨らみの違いで多少の差はありますが約1週間ほどの間に産み落とされたもので間違いありません。
ではこの37個を
①産卵時のマットそのままの状態。
②産卵時のマットを使用し、加水した状態。
③新たなマットを使用し、そのままの状態。
の3つに分けて経過観察します。
①→10個
②→17個
③→10個
膨らみの状態から順に割り振っていき、上記の個数に分配しました。
②の頭数が多いのはブリードの面でしっかり数を確保したいから。笑
温度は24℃ほどで管理し、4/8に割出しました。
およそ2ヶ月で結果はどうなったでしょうか?
2ヶ月後のケースはこんな感じ。
土を増やしているものもありますが、側面から見えた幼虫の数やサイズから判断したものです。
まずは期待の②番、産卵時のマットを使い加水した組。
裏返した状態で幼虫は3頭見えます。しかも2齢までいる。
結果は4頭!!
もっと多いと思いましたが、こんなもんか。
続いて、③番の新たなマットを使用し、加水しなかった組。
マットはファミリアさんの万能マット、開封後1日だけガス抜きを行い、水分調節せずに卵を管理しました。
裏返すとこんな感じ。幼虫はいますね。
結果は3頭!!
でも、先ほどの個体群よりは幼虫達が小さいので、孵化時期は遅いと考えられます。
そして最後は①番の産卵マットをそのまま使用した組。加水処理はしてませんが、それでも③番よりは水分量多めでした。
裏返すと、お!!
幼虫が4頭見える!この段階で孵化率は1番高いです。
結果は5頭!!!!
なんと、管理していた卵が半数も孵化してくれてました。全部初齢ですが、③よりは成長しています。
というわけで、総論。
総論
結果は以下の通りでした。
①→5/10
②→4/17
③→3/10
数字上は②の産卵時のマットをそのままの状態で管理するパターンに軍配が上がりましたが、幼虫の成長具合から考えると孵化した順番は②の加水組が僅かに早い印象です。
今後も追加検証をしていく必要はありますが、現段階では産卵セットで使用したマットをそのまま使用して孵化させることが最善であると言えます。
メスが産卵出来ると判断した水分量であれば問題なく孵化してくるということですね。